飽きたから

飽きたからです

放課後の話

誰も居なくなった教室にふたりだけ 野球部のかけ声と、吹奏楽部の演奏 窓の外に広がる夕焼けはやたらと綺麗で 僕の顔を覗き込んだままの彼女が言ったのは「世界にふたりだけみたいだね」 「ずっと放課後だったらいいのにね」勿論、そんなわけはなく 家に帰り…

たこ焼きの話

あまり行きやすくない路地の奥にある、あまり居心地の良くないたこ焼き屋の あまり美味しくはないたこ焼きの味が、どうにも好きでたまらない 時代は進み、良くないものはいつか淘汰されるのだろう 美味しくないものは無くなってしまうかもしれない 居心地の…

小指の話

彼女には小指が無かった 何かやらかしたのだろうか いや、そもそも高校生が何かやらかしたとして小指を詰めさせられることなんてあるだろうか しかも、女の子が? 怖いなあ、なんて思った 綺麗だな、とも思った 何となくエロい気がしたんだ ほとんど話したこ…

街の話

自分が自分では無かったら、なんて考えたことが、実はみんなあると思う 僕は小学生の時、女友達がやっていたFF7を見ていたときに考えていた いや、また全然違う話かもしれないけど、数年も経てば人間なんて別人になるよな なんて、思った 久々に会った彼女は…

あの日の話

友達なんていなかった いや、彼女を友達と呼ぶなら、一人だけいたのかもしれない 廃部を待つだけの文芸部員だった僕らは、特に何か活動をすることもなく、ただその部屋にいた 妙に彼女のことが気になった日があった 別にいつもと何も変わらない部室 彼女はい…

悲しい話

寒い 大好きだったあの子は今や東京でキャバ嬢なんてやってるらしい 裏切られた訳でもないのに、裏切られた気分だ、泣きそうだ 冬は毎年泣きそうだ 寒さや、匂いや、風景に、色んなものを思い出してしまう 多分別に、いつかに戻りたいとかそんなわけではない…

つまらない話

「あの頃、もっと仲良くしていればよかったね」 なんて、言われた 何だか居心地が悪い 背中に触れるヒートテックの感触がずっと気持ち悪い 出された酒は何だか甘ったるくて全部飲めそうにない やたらと赤く塗られた唇も、変に高いその声も、鼻につく匂いも、…

笑えない日々の話

漫画みたいだな、なんて思うと、何となく恥ずかしくなった 屋上へ向かう階段はいつも通り埃っぽくて、何故か鍵のかからないドアはいつもより重く感じた 今日で卒業だというのに、彼は結局ここに来ることはなかった 卒業して、大学へ行って、それで? 今日に…

それはそれだけの話

ラッタッタ 正式名称はホンダ・ロードパル 彼女はいつでもそれに跨り、僕をからかうように抜かしていった 楽しくて仕方がないというふうに、笑いながら、原付にあるまじきスピードで駆け抜けていった その頃は彼女の背負うやたらと大きな荷物の正体も、その…

あの部屋の話

文芸部員は僕と彼女だけだった 来年には無くなるその部室に、特に話すこともなく、ただ静かに座っていた 結婚の便りが届いたのは昨日の話 別に好きだったわけでもないし、特別に仲が良かったわけですらない なのに、茶髪になって、眼鏡も外して夫になるので…

時間が経てば忘れる話

毎日つつがなく積み重ねた記憶が今現在の人格を形成しているとして 夏が来て、冬の寒さを忘れてしまった俺らは 冬が待ち遠しいなんて呟いて 冬が来て、夏の暑さを忘れてしまった俺らは 夏が待ち遠しいなんて呟くのだ 少し忘れっぽい性質は、俺の人格にどこま…