ニッ記

基本的に嘘です

冬の空気の話

こちらへ来てからおよそ丸一年が過ぎようとしているが 冬の早朝の空気を吸ったのは今日が初めてではなかっただろうかおれはいつもこういった文章を寝る前に書くものだから 日をまたいでしまうと「今日」の扱いがよくわからなくなる けれどまあ今日だ、初めて…

時計の話

完全に寒いな、もう秋になったな とある日に思ったというのに 未だに普通に暑かったりして 油断ならない日々が続いている確実に日は短くなってきていて 窓の外の明度と時計の針がズレているような感覚になる と思いきや、この時計は本当にズレているな そも…

ミケンの話

ミステリー研究部は部員が定員を下回ったため、 ミステリー愛好会へと姿を変えた「略して"スカイ"だな、爽やかに行こう」 なんて彼女なら笑っただろうか僕はといえば、 太陽が真上を過ぎたくらいにやっと布団から抜け出すことができた 居間に用意されていた…

海と頭の話

砂浜で頭を拾った 長い髪は潮で焼けてしまっているが、きっと綺麗な黒髪だったのだろう そして人の頭とはなかなかに重いものなのだな海に来たのには特に理由はなかった 別に何を忘れたわけでもなく、 別に何を失くしたわけでもない ただ疲れただけで、 ただ…

言語の話

ふと疑問に思った 疑問、というよりは、違和感か「お湯」にあたる英語が存在しないのだ Google先生には「hot water」だと言われた 熱い水、となる 日本人は、温度が変わることによって「水」は「お湯」という 別の物質になると区別している 英語ではそこに区…

セミの話

セミが鳴いているが、鳴いていないような気もする 実家にいた頃はうるさくて眠れないほどだった覚えがあるが、 夜は鳴いていなかったような気もするどこかの国からの留学生が家に泊まりに来たとき、 セミの鳴き声を聞いて 「コンストラクション?……アー、コ…

大人の話

銀行で働くようになってから、疑問に思うようになったことがある あるが、何となくここには書かないでおくそれとは別の話だが、 大人になれば、もっと大人になれると思っていたな 父や母が当然のように成していたことを 僕も大人になれば当然のように成せる…

発熱の話

どうにも調子が良くないな、と思っていると やはりというかなんというか、熱が出た どうやら特に原因はなく、 ただ単に風邪をひいてしまったようだ久しぶりに病床に臥せって、窓から外を眺めていた すると、そういえばと気が付いた 風景を覆い隠すように生え…

甘い匂いの話

僕が恋心を抱いているクラスメイトからは、いつも甘い匂いが漂っていて 僕は気持ちの悪いことに、それが残る道を追いかけている そのうちにいつの間にか外は夕暮れ時 図書室で眠ってしまっていたようだ全校生徒の下校時間を告げる「新世界より」が流れている…

廃工場の話

廃工場の写真を撮り始めたのは、19歳の頃だった自宅から歩いて数分、古惚けた工場 僕が小学生の頃には既に使われてなかった気がする もしかするとそう見えただけかもしれない かつては人の為に稼動していただろうその工場は、 忘れ去られ、ただ錆びて、埃を…

思い出話

どうやら私は、疲れてしまった 思い出は輝きを増すばかりで、何も見たくなくなった羨んでいるのだ 彼と過ごしたその日々に、或いはその記憶に 私に歩幅を合わせるその姿 一緒に水族館へ行ったときの輝いた目 降る雪に翳す手 寝顔に笑顔 泣き顔 焦る顔に困る…

朝の話

これほどに惰眠を貪ったのはいつぶりだろうか 朝早く起きては会社へ行き、帰ってシャワーでも浴びると日が変わる 目まぐるしく、振り回されるような日々の中で私はめちゃくちゃ寝坊したいつもとは違いすっきりとした目覚めと、 じと、と汗ばんだ肌と、 鳴っ…

夢と部屋の話

風邪薬のせいか 気付かないうちに寝ていた夢の中で、誰か懐かしい人に会っていたはずなのだが もう誰かわからなくなってしまった うっすらと二枚の絵が視界に浮かんでいて それが綺麗に重なったときだけ人生が綺麗に進む そんな感覚だけ覚えているあと一ヶ月…

麦茶の話

修学旅行だったか遠足だったか、 とにかく学校の行事で旅館だかホテルだかに泊まったときのことだ 部屋に戻る前に水筒を集めるよ、と言われ 幼い私は頭の中がハテナでいっぱいになった次の日になって、 家から出たときと同じ重さになって戻ってきた水筒を持…

時間が経てば忘れる話

毎日つつがなく積み重ねた記憶が 今現在の人格を形成しているとして 夏が来て、冬の寒さを忘れてしまった俺らは 冬が待ち遠しいなんて呟いて 冬が来て、夏の暑さを忘れてしまった俺らは 夏が待ち遠しいなんて呟くのだ 少し忘れっぽい性質は、 俺の人格にどこ…