ニッ記

なかったことを日記に書いています

時計の話

完全に寒いな、もう秋になったな とある日に思ったというのに 未だに普通に暑かったりして 油断ならない日々が続いている確実に日は短くなってきていて 窓の外の明度と時計の針がズレているような感覚になる と思いきや、この時計は本当にズレているな そも…

ミケンの話

ミステリー研究部は部員が定員を下回ったため、 ミステリー愛好会へと姿を変えた「略して"スカイ"だな、爽やかに行こう」 なんて彼女なら笑っただろうか僕はといえば、 太陽が真上を過ぎたくらいにやっと布団から抜け出すことができた 居間に用意されていた…

カルラの話

楽器というものは本当に困ったもので、 一日中練習して、一日分上達するが 一日練習を怠れば、三日分は下手になる ……という話は、さすがに言い過ぎだと思うが それくらいの気持ちで努力しなければならないということだ そして、上手くなれば全て解決するとい…

バイトの話

幼い頃から「ひとつのことを長く続ける」ということが出来てこなかった僕は ひとつとして人に自慢できる特技や趣味は無かった自分よりもはるか歳下になってしまった高校球児を見て、 尊敬とも羨望ともつかない妙な感情を抱いてしまうだけれども ただひとつ、…

海と頭の話

砂浜で頭を拾った 長い髪は潮で焼けてしまっているが、きっと綺麗な黒髪だったのだろう そして人の頭とはなかなかに重いものなのだな海に来たのには特に理由はなかった 別に何を忘れたわけでもなく、 別に何を失くしたわけでもない ただ疲れただけで、 ただ…

言語の話

ふと疑問に思った 疑問、というよりは、違和感か「お湯」にあたる英語が存在しないのだ Google先生には「hot water」だと言われた 熱い水、となる 日本人は、温度が変わることによって「水」は「お湯」という 別の物質になると区別している 英語ではそこに区…

セミの話

セミが鳴いているが、鳴いていないような気もする 実家にいた頃はうるさくて眠れないほどだった覚えがあるが、 夜は鳴いていなかったような気もするどこかの国からの留学生が家に泊まりに来たとき、 セミの鳴き声を聞いて 「コンストラクション?……アー、コ…

大人の話

銀行で働くようになってから、疑問に思うようになったことがある あるが、何となくここには書かないでおくそれとは別の話だが、 大人になれば、もっと大人になれると思っていたな 父や母が当然のように成していたことを 僕も大人になれば当然のように成せる…

発熱の話

どうにも調子が良くないな、と思っていると やはりというかなんというか、熱が出た どうやら特に原因はなく、 ただ単に風邪をひいてしまったようだ久しぶりに病床に臥せって、窓から外を眺めていた すると、そういえばと気が付いた 風景を覆い隠すように生え…

未来と日々の話

彼は赤ペンを使わなかった隣の席になって一ヶ月、 私は何となく、あまり仲良くなれないままなのだけれど それでも分かるくらいには、彼は変な人だと思う前髪が長くて、目は隠れていて 何を考えてるのか全くわからなくて、 授業中にはいつも寝ているか、赤鉛…

甘い匂いの話

僕が恋心を抱いているクラスメイトからは、いつも甘い匂いが漂っていて 僕は気持ちの悪いことに、それが残る道を追いかけている そのうちにいつの間にか外は夕暮れ時 図書室で眠ってしまっていたようだ全校生徒の下校時間を告げる「新世界より」が流れている…

廃工場の話

廃工場の写真を撮り始めたのは、19歳の頃だった自宅から歩いて数分、古惚けた工場 僕が小学生の頃には既に使われてなかった気がする もしかするとそう見えただけかもしれない かつては人の為に稼動していただろうその工場は、 忘れ去られ、ただ錆びて、埃を…

思い出話

どうやら私は、疲れてしまった 思い出は輝きを増すばかりで、何も見たくなくなった羨んでいるのだ 彼と過ごしたその日々に、或いはその記憶に 私に歩幅を合わせるその姿 一緒に水族館へ行ったときの輝いた目 降る雪に翳す手 寝顔に笑顔 泣き顔 焦る顔に困る…

朝の話

これほどに惰眠を貪ったのはいつぶりだろうか 朝早く起きては会社へ行き、帰ってシャワーでも浴びると日が変わる 目まぐるしく、振り回されるような日々の中で私はめちゃくちゃ寝坊したいつもとは違いすっきりとした目覚めと、 じと、と汗ばんだ肌と、 鳴っ…

夢と部屋の話

風邪薬のせいか 気付かないうちに寝ていた夢の中で、誰か懐かしい人に会っていたはずなのだが もう誰かわからなくなってしまった うっすらと二枚の絵が視界に浮かんでいて それが綺麗に重なったときだけ人生が綺麗に進む そんな感覚だけ覚えているあと一ヶ月…

麦茶の話

修学旅行だったか遠足だったか、 とにかく学校の行事で旅館だかホテルだかに泊まったときのことだ 部屋に戻る前に水筒を集めるよ、と言われ 幼い私は頭の中がハテナでいっぱいになった次の日になって、 家から出たときと同じ重さになって戻ってきた水筒を持…

放課後の話

誰も居なくなった教室にふたりだけ 野球部のかけ声と、吹奏楽部の演奏 窓の外に広がる夕焼けはやたらと綺麗で 僕の顔を覗き込んだままの彼女が言ったのは「世界にふたりだけみたいだね」 「ずっと放課後だったらいいのにね」勿論、そんなわけはなく 家に帰り…

たこ焼きの話

あまり行きやすくない路地の奥にある あまり居心地の良くないたこ焼き屋の あまり美味しくはないたこ焼きの味が どうにも好きでたまらない 時代は進み、良くないものはいつか淘汰されるのだろう 美味しくないものは無くなってしまうかもしれない 居心地の良…

小指の話

彼女には小指が無かった 何かやらかしたのだろうか いや、そもそも高校生が何かやらかしたとして 小指を詰めさせられることなんてあるだろうか しかも、女の子が? 怖いなあ、なんて思った 綺麗だな、とも思った 何となくエロい気がしたんだ ほとんど話した…

街の話

自分が自分では無かったら、なんて考えたことが、 実はみんなあると思う 僕は小学生の時、 女友達がやっていたFF7を見ていたときに考えていた いや、また全然違う話かもしれないけど、 数年も経てば人間なんて別人になるよな なんて、思った 久々に会った彼…

あの日の話

友達なんていなかった いや、彼女を友達と呼ぶなら、一人だけいたのかもしれない 廃部を待つだけの文芸部員だった僕らは、 特に何か活動をすることもなく、ただその部屋にいた 妙に彼女のことが気になった日があった 別にいつもと何も変わらない部室 彼女は…

悲しい話

寒い 大好きだったあの子は 今や東京でキャバ嬢なんてやってるらしい 裏切られた訳でもないのに、裏切られた気分だ、 泣きそうだ 冬は毎年泣きそうだ 寒さや、匂いや、風景に、色んなものを思い出してしまう 多分別に、いつかに戻りたいとかそんなわけではな…

つまらない話

「あの頃、もっと仲良くしていればよかったね」 なんて、言われた 何だか居心地が悪い 背中に触れるヒートテックの感触がずっと気持ち悪い 出された酒は何だか甘ったるくて全部飲めそうにない やたらと赤く塗られた唇も、変に高いその声も、 鼻につく匂いも…

笑えない日々の話

漫画みたいだな、なんて思うと、何となく恥ずかしくなった 屋上へ向かう階段はいつも通り埃っぽくて、 何故か鍵のかからないドアはいつもより重く感じた 今日で卒業だというのに、彼は結局ここに来ることはなかった 卒業して、大学へ行って、それで? 今日に…

それはそれだけの話

ラッタッタ 正式名称はホンダ・ロードパル 彼女はいつでもそれに跨り、 僕をからかうように抜かしていった 楽しくて仕方がないというふうに、笑いながら、 原付にあるまじきスピードで駆け抜けていった その頃は彼女の背負うやたらと大きな荷物の正体も、 そ…

あの部屋の話

文芸部員は僕と彼女だけだった 来年には無くなるその部室に、特に話すこともなく、 ただ静かに座っていた 結婚の便りが届いたのは昨日の話 別に好きだったわけでもないし、 特別に仲が良かったわけですらない なのに、茶髪になって、眼鏡も外して 夫になる…

時間が経てば忘れる話

毎日つつがなく積み重ねた記憶が 今現在の人格を形成しているとして 夏が来て、冬の寒さを忘れてしまった俺らは 冬が待ち遠しいなんて呟いて 冬が来て、夏の暑さを忘れてしまった俺らは 夏が待ち遠しいなんて呟くのだ 少し忘れっぽい性質は、 俺の人格にどこ…