ニッ記

なかったことを日記に書いています

笑えない日々の話

 

 

漫画みたいだな、なんて思うと、何となく恥ずかしくなった

屋上へ向かう階段はいつも通り埃っぽくて、

何故か鍵のかからないドアはいつもより重く感じた

今日で卒業だというのに、彼は結局ここに来ることはなかった

卒業して、大学へ行って、それで?

今日になっても結局何もわからなかった

何となく大学に行くことにして、何となく卒業する

何となく高校生活を過ごしてきた私は、

何となくその日々から離れていく

風が強くて、流されそうだ

どこへ向かうのかもわからない

前髪は目にかからないように綺麗に揃えているのに、

何も見えないみたいだ

彼はいつも目が隠れていたのに、

ずっと何かを見ていたみたいだ

 

いつも眠っていた

授業も聞かず机に突っ伏して寝ている彼は、

向こうを向いたりこっちを向いたり

何故かいつも寝苦しそうだった

いや、学校の机なんかで安らかに眠れるわけはないか

少しの間それを繰り返すと、

ようやく落ち着く体勢を見つけたのか

こっちを向いたまま深い寝息を立て初めた

長い前髪の間から見える穏やかな寝顔を見ると、

女の子みたいだな、なんて思って

頬にかかる髪を丁寧に除けてあげた

彼の髪に触れた指は何だかふわふわとした感じがした

 

屋上ではいつもスカートの扱いに困る

風に揺られ、ひらひらとして、うっとうしい

私は私服でスカートを持っていないので

もしかすると人生でスカートをはくのは

今日で最後になるかもしれない

どうだろう、わからない

そう思うと、

揺れるスカートも今日くらいは自由にさせてやろう、

なんて少し思ったかもしれない

思わなかったかもしれない

どうせ誰も見てはいない

……見られていても、それはそれでいいか

 

屋上から見える私達の街

彼が見た最後の景色

何処かへ流されていく私は、

けれど何処へ行くのかもわからないままだ

何もわからない、笑えない日々の話