飽きたから

飽きたからです

つまらない話

「あの頃、もっと仲良くしていればよかったね」

なんて、言われた。

何だか居心地が悪い。背中に触れるヒートテックの感触がずっと気持ち悪い。出された酒は何だか甘ったるくて全部飲めそうにない。

やたらと赤く塗られた唇も、変に高いその声も、鼻につく匂いも、とにかく気に入らない。……委員長だった女。

 

委員長というのは、眼鏡で、真面目で、ちょっとそばかすなんかあったりして、でも実は美人なんだ。そういうものだろう?

彼女もそうだった。

眼鏡で、真面目で、ちょっとそばかすなんかあったりして、でも実は美人だった。

別に好きとかじゃなかった。別に嫌いとかでもなかった。

ただ、元気で居てほしかった。……何でだっけ? 何にも覚えていない。仲が良かったわけでもない。

何でだっけ? 本当に思い出せない。

 

思い出せば思い出すほど、目の前にいる女性がそうだなんて思えなかった。

僕はどうだろう、僕は彼女の目にどう映っている?

皆と同じように大学へ行って、皆と同じように大学を卒業して、

皆と同じようには就職が出来ず、皆と同じように生きることが出来なかった、

当たり前に来ると思っていた未来も当たり前に掴めず、

皆が言う「普通」にも届かず、

それでもまだ何となくふわふわと夢を見ている僕を、

彼女はどう見ている?

わからなかった。

 

彼女は絵が上手だったな。休み時間にはいつも絵を描いていた。僕はいつもそれを覗いていたんだ。気付かれていただろうか。好きだったんだよな、彼女の絵が。

もっとちゃんと見てみたかったけれど、別に仲良くもない僕は結局何となく覗いているだけだった。

あ、今初めて思った。「あの頃、もっと仲良くしていればよかったな」。

こういう気持ちだったんだろうか。……いや、違うか。

 

皆が言う「普通」になった彼女は、今も絵を描いているだろうか?

描いているならどんな絵だろうか?

当時、彼女のことを何も知らなかった僕は、今の彼女のことも、何も知らない。

当たり前のことだ。普通で当たり前で、つまらない話だ。

 

あの頃、もっと仲良くしていればよかったかな。