飽きたから

飽きたからです

あの日の話

友達なんていなかった。いや、彼女を友達と呼ぶなら、一人だけいたのかもしれない。
廃部を待つだけの文芸部員だった僕らは、特に何か活動をすることもなく、ただその部屋にいた。

妙に彼女のことが気になった日があった。

別にいつもと何も変わらない部室。彼女はいつも通り窓際の椅子に座って、本を読んでいた。
落ち着いた色の膝掛け、室内なのにマフラーを巻いたままだ。
寒いならストーブを入れればいいのに……なんて思いながら、スイッチを入れた。
いつも通り、僕が何をしても彼女は何の反応もない、……と思ってたんだけれど、違った。
彼女がこんなタイミングで本から目を離したのは初めて見たかもしれない。

ありがとう、と聞こえた気がする。

何だか全く想像していなかったものだから、頭が反応に困っている感じがした。ふわふわとした気分。指先がヒリヒリする。
ううん、どういうことだろう。
……いや、自分で点ければ良かったのに。何だか色々とわからない。

彼女はもう本に目を落としていた。ストーブから出た熱が少しずつ部屋に広がる。彼女の座る椅子が軋む。静かな部屋には、やたらと音が響く。ふわふわしている。ふわふわしている……。

好きだったのかなあ、なんてたまに思うようになった。
卒業してからは会ってもいないし、自分にはもう妻も子供もいる。
彼女だって、もう結婚するそうだ。……前にも書いたか。

けれど、なんだったんだろう。
あの日の話。今でも、ふわふわする。