ニッ記

基本的に嘘です

麦茶の話

修学旅行だったか遠足だったか、
とにかく学校の行事で旅館だかホテルだかに泊まったときのことだ
部屋に戻る前に水筒を集めるよ、と言われ
幼い私は頭の中がハテナでいっぱいになった

次の日になって、
家から出たときと同じ重さになって戻ってきた水筒を持って
初めて「ああ、お茶を入れてくれたのだ」と気付いた
外で買ったりする必要が無いように、全員の分を用意してくれるなんて
気が利いているなあ、と幼いながらに思ったものだった

しかし、機嫌良く水筒に口をつけた瞬間に
その思いも、感謝も、一瞬にして崩れ去ったのだった
熱いのだ
それはもうめちゃくちゃに

運悪く、私の水筒は蓋がコップになってくれるタイプではなかった
直接口をつけて飲む、ペットボトルのようになっているものだ
普通は蓋に注いだ際に湯気が出て気付くだろう
もしくは、水筒を持った時点で気付いた者もいたかもしれない

だが、気付けなかったのだ
何故言ってくれなかったのか
私の脳は待ち焦がれた「冷えたお茶」と、
突然の「熱々のお茶」とのギャップに
完全にパニックを起こしてしまった

飲み口を乱暴に唇から剥がし、
自分でも何故かわからないが
中蓋を外し、水筒をその場にひっくり返した

もちろん入れてくれたお茶は無残に床に広がり、
湯気が立ち上る中、私は何故か「危なかった……」と呟いた
先生は「麦茶は大事にしなければならない」と、
よくわからない怒り方をしていた

申し訳ないことをしたな、と今では思えるが
当時はとにかく焦りと、怒りと、
裏切られたという謎の悲しみに苛まれて、
なんで私だけ、という悔しい気持ちでいっぱいだった

家に帰る頃には気持ちもかなり落ち着いていたが、
今度は申し訳なさや恥ずかしさが湧いてきてしまい
数日間は「麦茶は大事にしなければならないのに」と落ち込んでいた