ニッ記

基本的に嘘です

思い出話

どうやら私は、疲れてしまった
思い出は輝きを増すばかりで、何も見たくなくなった

羨んでいるのだ
彼と過ごしたその日々に、或いはその記憶に
私に歩幅を合わせるその姿
一緒に水族館へ行ったときの輝いた目
降る雪に翳す手
寝顔に笑顔
泣き顔
焦る顔に困る顔
歩く姿走る姿立つ姿座る姿
私の頬に触れた温もり
その全てに

似合わない病衣は放り出したまま、
未だ慣れない手つきでキーを回し、エンジンをかけた
給油のランプが点灯しているが、問題にはならないだろう

そういえば
この時期ならうるさいくらいに鳴いているはずのセミの声も
私はまだ聞いていなかった