ニッ記

基本的に嘘です

甘い匂いの話


僕が恋心を抱いているクラスメイトからは、いつも甘い匂いが漂っていて
僕は気持ちの悪いことに、それが残る道を追いかけている
そのうちにいつの間にか外は夕暮れ時
図書室で眠ってしまっていたようだ

全校生徒の下校時間を告げる「新世界より」が流れている
急いで飛び起き、隣に置いていた鞄を引っ掴んで立ち上がる
……と、すぐ間近から、あの匂いを感じた
周りには誰もいないけれど、間違えるはずがない
あの子の匂いだった

普段感じているよりも数倍の強さで、
しかも思い掛けない状況で来てしまったものだから
僕の脳は痺れたようになってしまった
目がちかちかとして、足はふらつく
どうしよう、どういうことだろう
確かにあの子はここにいたのだろう、でも、何で?

僕はおぼつかない足取りで何とか家に帰ると、鞄を床に放り出し、
そのままベッドに倒れ込んだ
何で、どうして、が消えなかった
目を瞑りぐるぐると思考を繰り返しているうちに、
異変に気付いた

あの子の匂いがする
確かにすぐ近くから、僕の脳をくすぐるあの匂いがする
どこからだろう?
犬のように鼻を鳴らしながら探ってみると、
それは僕の鞄から漂っていることがわかった

理解の出来ない状況に震える指で何とか鞄をひっくり返すと、
憶えのない、長方形の小包と、
小さなメモが入っていた

小包を開くと、あの子の匂いがさらに広がった
可愛らしいフルーツの柄が書かれたそれは、石鹸だろうか
あの子の匂いのする石鹸
そしてメモには意外と大人っぽい綺麗な字で、
「誕生日おめでと」と、だけ

僕は嬉しくなってしまって、
あの子の夢を見ることを願い、その石鹸を枕元に置いて寝ることにしたが
あまりの強い匂いに鼻がおかしくなってしまったし
フルーツに押し潰される怖い夢を見たので
少し後悔している

僕が恋心を抱いているクラスメイトからは、いつも甘い匂いが漂っていて
けれど僕は鼻がおかしくて、あまりよくわからなくなった